INTERVIEW

修了生インタビュー 志藤史明 氏

関連する研究をリサーチして解決の糸口をつかむ

――指導を受けた先生は?

行政学がご専門の和田明子先生です。

――研究テーマと、それを研究しようと思ったきっかけを教えてください。

入学した当初は行政評価を研究テーマとして挙げていました。そのテーマを選んだきっかけは、県の職員として働く中で、県が実施している既存の事業に対して、「このままでいいのだろうか?」という疑問を持っていたからです。事業の結果に対する評価やその後の方針決定、優先付けなどをきちんと行って、そのうえでどのような取捨選択を行っていくべきなのかを考えてみたいと思っていました。

――最終的には修士論文で何について研究することにしたのですか。

テーマをなかなか絞りきれず、例えば人事評価について研究することなども考えたのですが、最終的にはパートナーシップ、協働のあり方について研究することにしました。具体的には、行政が主導で行う「協働」の問題点をまとめたり、イギリスなど外国で行われている行政と民間とのパートナーシップと日本のそれとの比較を行ったりといったようなものです。

――大学院で学んだことが職場で役立ったことはありますか。

大学院に入る前は、行政の各分野について多くの研究者がいるということ、あるいは関連書籍や論文が世の中にはたくさん出ているということを恥ずかしながらほとんど知りませんでした。今は仕事でそうしたものを活用できるようになりました。行き詰ったり、迷ったりすることがあっても、どこかで関連する研究が行われていないかと探し、解決の糸口をつかむうえで参考にするなどしています。もし大学院で学ばなければ、自分一人で悩んで終わってしまっていたかもしれません。ただ、役所の外部の人たちと話し合いや調整をしながら仕事を進めていく部署にいたときと、今所属している財政課のように内部管理が主な仕事の部署とでは、課題の種類も違ってきます。今は、課題解決というよりは、いかに自分の仕事を効率よく進めていくかということに手一杯で、書籍や論文を目にする機会もあまりなくなってしまいました…。ただ、本当はこういうときこそ一度、自分の仕事を冷静に見つめ直して、より良い仕事をするために必要なことを考えなければならないのかもしれませんが。

――これまで県庁ではどのような部署を経験されましたか。

最初は県庁の税務課に配属され、3年間、税関係の仕事をしました。次に庄内総合支庁に転勤となり、観光関係の仕事を1年経験した翌年に東北公益文科大学大学院に派遣されました。公益大大学院では2年間、学生として研究活動を行いました。大学院修了後は庄内総合支庁に戻り、地域振興のセクションに2年間在籍しました。庄内にはこの間、通算5年いたわけですが、色々な方々と知り合うことができ、また、地域の中に入っていって諸々の声を聞きながら仕事をするという貴重な経験ができました。おそらく、この5年間の経験が今後の自分の仕事の指針なり判断基準なりとしてずっと残っていくと思います。その後は県庁に戻って、財政課に1年配属されたあと、総務省自治財政局財政課に1年間出向しました。そして現在、財政課に戻って地方交付税の積算や県債の管理といった仕事をしています。

――大学院を修了したあとに県庁から総務省に1年間出向されたそうですが、そのときの経験を伺わせてください。

総務省の自治財政局財政課では、国から都道府県や市町村に交付する地方交付税の交付額の算定が主な仕事でした。何百という数がある算定項目について20人ぐらいの担当者がそれぞれ分担して算定を行い、積み上げていきます。道路の建設費や学校の教員の人件費にいくらかかるかなどについて調査したり、人口や田畑の面積等のデータを引いてきたりして算定していきます。算定だけをメインにする人もいれば、集約して全体の調整をメインに行う人もいます。積み上げたものはそのままではなく、上下動が大きい場合には、増え過ぎたものを減らしたり、減り過ぎたものを戻したり、さらに新しいものを追加したりというような調整も行いながら、交付額を決めていきます。

――中央省庁は担当者一人が抱える仕事量が膨大で、業務が深夜に及んだり、徹夜になったりすることが日常茶飯事だと聞きますが、総務省はどうでしたか?

そうですね、終電ぐらいまでは毎日普通に働いていました。もっとも、現在の県の財政課でも同じぐらいの時間まで残って仕事をしていますが…。

――大学院時代の印象深い思い出はありますか。

日々の研究活動が苦しかったことがまずは思い出されますが、特に印象に残っているのは2回の海外経験です。国際交流プログラムで米国に、そして、大学教授の視察の同行で英国に行きました。自分はそれほど積極的な人間ではないと思っていますが、せっかく大学院で研究活動をする機会をもらったのだから、多少、無理をしてでもできることは何でも経験してみようという気持ちが自分を後押しして、活動範囲を広げることができたような気がします。

――大学院への入学を志望される皆さんにメッセージをお願いします。

私は大学院の研究で学んだことももちろん大切にしていますが、それと同じぐらいに大学院時代の仲間との交流を大切にしています。いまでもそのときの横のつながりは私の貴重な財産になっています。これから公益大大学院に入学される方も、一緒に学ぶ仲間との交流をぜひ大切になさってください。

(H23.8)

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