INTERVIEW

修了生インタビュー 後藤好邦氏

自分の研究したい分野を公益に絡め、広い視野で物事を捉える

――大学院で指導を受けた先生は?

行政学を専門となさっていて、ニュージーランドの公的部門改革及びNPM(ニュー・パブリック・マネジメント)を研究されている和田明子先生からご指導いただきました。

――大学院に入るまでにどのぐらい社会人として働いておられましたか。また、働くなかでどのような問題意識をおもちでしたか。

14年間ぐらいですね。行政評価の部署で仕事をして3年目ぐらいのときに、もっと掘り下げてみたいということが出てきました。日本の地方自治体における行政評価では経年比較を重視しているため、他の自治体や他の組織との比較はあまり行われません。しかし、一つの組織の中だけで前年度より今年度が良ければそれでOKとするだけでは十分ではないと感じていました。極端なことをいえば、100位から99位に上がっただけでは住民の方は成果が上がったとは評価しないはずです。やはり他の組織と比較して自分の組織のポジションを客観的に捉え直すことが必要です。

――大学院に入学されたきっかけは?

いま申し上げたように都市間比較を行政評価の視点で取り入れるための効率的な方法についてきちんと考えてみたいと思うようになったことです。また、英国の自治体を視察する機会があり、英国の地方自治の仕組みを目の当たりにして、その良い部分を日本の制度に取り込むにはどうしたらいいかを考えてみたくなったこともきっかけとなっています。

――大学院での研究テーマは?

最初は自治体間のパートナーシップを研究テーマに掲げていました。それを進めるためのツールとして、行政評価の部署にいた経験や英国視察での問題意識から、自治体ベンチマーキングに注目することにしました。自治体ベンチマーキングとは、自治体間で指標を比較しながら、もっとも進んでいる自治体はどこかを抽出し、その成功要因を分析し、それぞれの組織体に合ったやり方でベストプラクティスの成功要因を活かすというものです。最終的には、その比較の仕方と活かし方を修士論文に書きました。

――修士論文はどのように進めていきましたか。

ベンチマーキングには単なる指標の比較だけでなく、様々な手法があります。そうしたものを整理・分類しました。また、他の自治体の取り組みを自分の自治体に活用するための活動を実践している自治体に連絡をとり、その担当者にアンケート調査なども実施しました。さらに、市政に関する市民アンケート調査なども行いました。

――抱えている課題というのは自治体ごとに異なると思いますが、そうしたものはどうやって比較したり、取り込んでいったりするのですか。

私は先進事例を調べて、ベンチマーキング手法の類型化を行いました。その結果いろいろなタイプの中からそれぞれの自治体に合うものを取り入れることが大切だと考えるようになりました。例えば、その一つのやり方として、政策課題が同じ自治体をグルーピングして比較するというやり方などがあると思います。どの手法が絶対的に良いかではなくて、様々な手法の中から各自治体が選択していくという考え方が重要だと思います。

――大学院を修了して職場に戻られて、何か仕事に活かすことができましたか。

現在は他の部署に移りましたが、大学院修了後、1年間は行政評価の仕事をしていました。ただ、いまの仕組みの中で大学院在学中に研究したことをすぐにそのままの状態で反映させることはもちろんできませんでした。しかし行政評価の視点として都市間比較の視点を行政評価の調書で多少重み付けできたことは良かったと感じています。

――いま関心をもっておられることはどのようなことですか。

市役所で働いているのでもちろん市全体のことを考えていかなければならないのですが、市といっても非常に大きくて、その中にいろいろな地域があり、それぞれの地域コミュニティによって文化が違い、また、抱えている課題が異なります。それにもかかわらず、画一的な政策、画一的な規制などをしているのが現状ですので、地域に合った政策や規制緩和の方法は何かを考えています。

――大学院時代の印象深い思い出を伺わせください。

研究報告会や合宿などで夜に飲み会をして、自分の研究テーマについて、院生同士で話をしたというのが一番の思い出ですね。公益大大学院の院生は行政職員が多いのですが、民間企業に勤めておられる方や議員の方もおられて、そうした様々な分野の方々と公益を題材にして話ができたことは良い経験だったと思います。

――公益大大学院を志望する方にメッセージがありましたらお願いします。

公益という考え方は何か決まったものがあるわけではなく、公益に対する考え方は一人ひとり異なっていると思います。そのように決まったものがないということは、逆にいえば、いろいろな研究ができる分野であるともいえます。自分の研究したい分野があったときに、それをどうやって公益につなげていくかを考えると、その研究分野だけを突きつめていくよりも広い視野で物事を捉えることができると思います。もし何か研究したいというテーマをもっているのなら、ぜひ公益大大学院に入学し公益に絡めて研究していただきたいと思います。公益大大学院では、働いているだけでは決して得られないものをたくさん吸収することができます。また学ぶことだけではなく、出会いや交流などの機会がたくさんあります。ぜひ多くの方に大学院生という貴重な時間を過ごして欲しいと思います。

(H23.8)

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