INTERVIEW

教員インタビュー 温井亨教授

人が暮らす中でできた風景を、いかにして保存、再生するか

――先生の研究テーマと内容について教えてください。

まちづくり、そして農村のむらづくりをやっています。まちづくりについては外からまちを見て調査して分析するのではなく、自分自身も当事者だという方法をとっています。つまり、研究であり実践であるというやり方です。私が主に関わっているのは上山市の中心部と庄内町余目の中心部です。それぞれの行政からは上山市まちづくりアドバイザー、庄内町地域活性化アドバイザーという形で私の居場所を位置づけてもらっていますので、いろいろな面で動きやすくて助かっています。また、むらづくりについていま関わっているのは、月山の恵みの里庄内交流推進協議会が開催しているワークショップなどです。

――上山市ではどのような活動をされているのですか。

上山市では市役所職員、地元のコミュニティ・アーキテクト(自分の作品づくりに熱心な所謂建築家と区別して)、まちづくりセンターの職員を核としてそこに市民が加わり様々なまちづくり活動を行っています。例えば、一昨年空店舗をギャラリーに改装し、運営しています。ギャラリーを作品の展示空間、地域の交流拠点として機能させるとともに、中心市街地の賑わいを創出するというものです。また、まちづくりについて市民が話し合う場としても活用し、隔週で会議を開いています。さらに、途中段階で隣が空店舗になったため、そちらも工芸のアトリエとして活用しました。工芸家の卵が2階に住み込み、作家活動を市民に見える形で展開するため、1階でシルバーリングや七宝焼の制作体験、作品販売を行っています。

私は中心市街地に人が住まなければいけないと思っています。中心部というのは主に商店街になるのですが、いまは郊外に大型店舗ができ、商店街の物販がそれに伍していくのは困難です。これは車社会の構造的な問題です。そこで、物販ではなく、別のアプローチを行ったほうがいいと私は考えています。そもそも中心市街地にどのような機能があるかというと、情報の交換という機能もありました。かつてはモノとモノとの交換で市(いち)が立ち、市が常設になって商店街ができたのではないかと思いますが、商店街ではその当時からモノの売り買いだけでなく、情報の交換が行われていたはずです。普段は村という狭い世間だけで情報を交換していた人が、たまに町場にやってきて、色々な人たちと会って、情報を交換する、そういった機能を現代にも蘇らせて強化することが大切ではないでしょうか。ヨーロッパのカフェは町場の機能をうまく現代にも活かして営業的に成功している例だと思います。ただし、日本の喫茶店のように地下にあって常連や当事者だけの閉じた世界にしてしまうのではなくて、オープンカフェにしてまちの生活や生業が見えるところでお茶を飲めことが必要ですね。

また、情報交換の場をつくるだけでなく、まちの中の歴史的建物、これは重要文化財である必要はなくて、昔から地元の人たちが愛着をもってきた建物を壊さずに大事にしていくという取り組みも行っています。いま上山の地元の建築家と一緒に、大正から昭和初期の建物について登録文化財の調書をつくり、文化庁で審査してもらっているところです。登録文化財になっても固定資産税が少し安くなる程度で、助成金などが出ることはありませんが、きちんと保存の位置づけを行ったり、観光資源として活用していく話に結びつけたりするときに役立つと思います。このような地域の歴史的建物を見物しながら、まちを散歩し、疲れたらオープンカフェでお茶を飲むという形になるといいですね。上山の場合は、お城の周りを一周するように歩くとちょうどいい観光コースになります。いま中心市街地活性化基本計画として位置づけているところです。

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