INTERVIEW

教員インタビュー 温井亨教授

――むらづくりではどのようなことを実践されているのですか。

旧立川町の立谷沢で、月山の恵みの里庄内交流推進協議会が開催しているワークショップを行っています。食などの地域資源を活かして観光に結びつけ、都市と農村の交流を促進する取り組みで、農林水産省の助成を受けています。同会はやまぶどうの会の高梨美代子さんが代表を、庄内町グリーンツーリズムの会の小林仁さんが事務局長をつとめておられ、高梨さんは北月山荘で地元料理を昼食に出すという活動を、小林さんも農業体験などグリーンツーリズムの活動をなさっています。

また、昨年から西川町の綱取で公益社会演習を行っており、その関係で地域とつながりができました。綱取は、月山道(国道112号)沿いの集落ですが、国の重要文化財に指定されている岩根沢の三山神社の近くまで山の方に広がっていますので、夏休みにこの里山エリアでのグリーンツーリズムの可能性を調査しました。この岩根沢には詩人の丸山薫が戦時中に疎開しており、記念館もあります。グリーンツーリズムは農村の風景を見たり文化を体験したりして、都市と農村が親交を深めていくものですが、丸山薫の詩にはまさにグリーンツーリズムの原点があると思います。魅力的な里山の風景が広がっていて、私のゼミの3年生がこの綱取でぜひ卒論を書きたいと言っています。

――先生のご専門分野である「風景計画」とは?

造園学のことなのですが、明治時代につくられた造園という術語が実態にそぐわなくなってきているので、ランドスケープ・アーキテクチャーとカタカナで言ってみたり、学会内部でも議論が続いています。風景計画という術語は私の大学の恩師が使っていた言葉で、私の師が国立公園などの自然風景地を対象にしていたのに対し、私は農村や里山を対象にしています。景観という言葉もありますが、これは物理的視覚的現象に限定して学術用語として用いようとした歴史が我々の分野にはあり、それと比較すると農村や里山は暮らしの結果できたもので人文的な要素、主観的な要素なども含まれているので風景のほうがふさわしいと思っています。心象風景とは言っても心象景観とは言わないでしょう。私は、人が暮らす中でできてきた風景、そこに町場も加えて、どう保存しながら再生していくかを全体の研究としてまとめようと考えています。まちづくり、むらづくりということでいろいろと取り組んでいますが、一言でいえばそのためにやっているわけです。

地元の人たちはあまり気にとめないかもしれませんが、公益大のある庄内平野は一面に水田が広がり、緑の海の中に樹林と家並でできた集落が点在しています。これは里の風景として最も魅力的なものの1つです。世界遺産としても十分に通用するのではないでしょうか。庄内は私のような風景を研究している者にとって、研究対象として、そしてもちろん暮らすうえでも、このうえない魅力ある土地だと思っています。

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