INTERVIEW

教員インタビュー 武田真理子教授

“人”が重要なカギを握る、官民協働のあり方を探る

――研究テーマとその内容について教えてください。

いまの研究はニュージーランドについて、ひとり親世帯を対象として、福祉、所得保障などいろいろなニーズのある人たちにどのような自立支援ができるのかを研究しています。ともすると国の政策や自治体の制度など、様々な公的な仕組みが注目されがちですが、公的なものの総合性あるいはタテ割ではなくて、ヨコのつながり、つまり、様々に存在する地域のNPOやインフォーマルな部門のサービスや支援を結びつけ、どのように連携、協働していくことができるのかを大きなテーマとしてもっています。私はこれまでずっとニュージーランドのことを研究し、ようやくこのテーマに辿り着いたところですが、今後はニュージーランドを参考にして日本に活かしていきたいと考えています。
私はもともと社会保障制度の研究をする中で、セーフティネットについて国がどこまで、どのようにできるのかという漠然とした関心を抱いていました。それを考えたときにニュージーランドをいろいろと見ていくと、日本と対照的な国であることがわかりました。例えば、日本のような保険料を徴収する社会保険方式ではなく、全てを税で賄う全額税方式を採用しています。日本では保険料を払ってメンバーシップを得てから各種の社会保険が使える貢献原則を基本としていますが、ニュージーランドでは必要が認められれば全国民一律のルールのもとで生活保障、セーフティネットが用意されている仕組みとなっています。歴史的にみると、全国民を対象とするセーフティネットはニュージーランドが世界で初めて実現したものの、小さな国であったためにこれまであまり注目されてきませんでした。そこで、その包括的な社会保障の仕組み、セーフティネットの先進的な取り組みを明らかにすることを目的として研究を始め、現代社会の新しい課題に対してどのように取り組んでいけばいいかを見ているところです。

――そうした社会保障制度を維持するために、ニュージーランドは日本に比べて税金を高く設定しているのでしょうか。

いえ、決して高くありません。日本でいうところの消費税であるGST(一般消費税)が最近引き上げられて15%になりましたが、GSTが導入されたのは1987年からで、それ以前にはありませんでした。所得税は4段階の10.5%~33%となっており、法人税は28%です。相続税、不動産の取得・売却税などはありません。北欧型の高負担ではなく、中負担ということになるかと思います。GSTの率だけを見ると日本の消費税に比べて高くなりますが、保険料の徴収がないので、トータルで見れば、日本とそれほど変わらないのではないでしょうか。

――国民の負担は日本と変わらないものの、日本より手厚い福祉を受けられるのにはどのような理由があるからですか。

政府支出における福祉、医療、教育の割合が高いためです。なんのために税金を支払うかという点が、日本よりもはっきりしていて、やり方次第ではセーフティネットについて1つの可能性をニュージーランドは示していると思います。ただし、日本とは人口規模が異なり、また、日本のような経済規模は維持できない仕組みかもしれません。

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