- 髙谷時彦 教授「各自が活動するための1つの“テーブル”が用意され、様々な側面からまちづくりにアプローチできる」
- 伊藤眞知子 教授「みんながケアをする側にもまわる社会、そのシステムをいかにして構築するか」
- 澤邉みさ子 教授「網を広く張って精査する、私の研究の枠を超えていって欲しい」
- 武田真理子教授「“人”が重要なカギを握る、官民協働のあり方を探る」
- 温井亨 教授「人が暮らす中でできた風景をいかにして保存、再生するか」
みんながケアをする側にもまわる社会、そのシステムをいかにして構築するか
――研究テーマとその中身について教えてください。
専門は社会学と女性学で、ご存じのとおり非常に幅広い分野なのですが、私が研究テーマとしているのは「地方自治体の男女共同参画政策」です。今年は男女共同参画政策の一環としての「成人女性の学習」を基礎研究テーマに掲げ、大人の女性の学習という視点に立ったときに、どのような学習方法や学習内容にすれば、地域のリーダーとなる人材を育成できるか、大人の女性の“気づき”と“成長”をどのようにして進めていくかについて考えています。
また、女性センターや男女共同参画センターでの人材育成、特に女性のエンパワーメント、女性人材、女性リーダーの育成などにも取り組んでいます。これまでは能力のある女性がたくさんいるのに、「女性を登用したいけれど、人材がいない、育っていない」などといわれてきました。ただ、それに対して女性が単に冷遇されていると声を上げるだけでなく、もっと女性が力をつけていく必要があると思っています。そこで、地方自治体の男女共同参画政策を進めていく1つの手法として、女性センターや男女共同参画センターの活用があり、その仕組みや内容に関心をもっています。
この「女性センター」というのは女性限定のイメージが強く、一方で「男女共同参画センター」には男性も対象とするニュアンスがあります。1999年に男女共同参画社会基本法が施行され、女性自身に問題があるのではなく、社会の仕組みや構造そのものに問題があるという形に変化しました。この法律が一つの契機となり、政策面において「女性センター」は男性に参画してもらう「男女共同参画センター」へと名称変更するケースが出てきました。また、研究面でも、女性を前面に出していた女性学から、男女の関係性に注目したジェンダー研究へと流れが移っています。ただし、私はまだまだ女性のエンパワーメントが必要であるという問題意識をもっています。そのため、法律を変える、政策を強めていくトップダウンの方向と、女性の気づきや成長、力をつけること、発言力を高めていくことなどのボトムアップの方向という両面からのアプローチが必要だと考えています。
――女性のエンパワーメントとは?
エンパワーメントは、「力をつけること」と日本語では翻訳されています。「力をつけること」というのは、能力などを外側からつけることだけでなく、もともと内側にもっている力を引き出すことです。また、単に個人の能力開発だけでなく、グループのダイナミズムの中でどのように力をつけていくかということも含んでいます。大人の女性の学習という視点では仲間と一緒に力をつけていくことがとても大切なポイントです。日本では働く女性が増えているものの、管理職のポストに就きにくいという構造になっていて、政策・方針決定過程への女性参加が非常に少ないという状況があります。そこで、やはり女性が「力をつけること」、女性のエンパワーメントが必要です。その実践として山形県のチェリア塾に関わりながら、研究としてまとめていくことにも取り組んでいます。