- 髙谷時彦 教授「各自が活動するための1つの“テーブル”が用意され、様々な側面からまちづくりにアプローチできる」
- 伊藤眞知子 教授「みんながケアをする側にもまわる社会、そのシステムをいかにして構築するか」
- 澤邉みさ子 教授「網を広く張って精査する、私の研究の枠を超えていって欲しい」
- 武田真理子教授「“人”が重要なカギを握る、官民協働のあり方を探る」
- 温井亨 教授「人が暮らす中でできた風景をいかにして保存、再生するか」
――先生の研究室ではどのように研究指導を進めておられますか。
今年入学された修士課程1年の院生の方とは、テーマについていろいろと話し合っているところです。公務員の方なので、自治体職員として役に立つ研究をしようということで、地方分権化以降の自治体としてニーズの高い人たちに対してどういう取り組みができるのかを、ひとり親を対象に制度内、制度外の結びつきを含めて、修士論文でやってみようという方向性が出てきました。手始めに全国の自治体のアンケート調査を行い、どういった課題意識をもち、特色はどこかということを浮き彫りにしたうえで、最終的にはどこか先進地域の調査研究になるかもしれません。自治体だけの力ではもちろん解決できませんが、その役割は大きいと私は信じています。
毎週1回というペースで、院生の方の演習を行っていて、私と同じようなテーマで取り組んでいく方向性が出ているので、二人で違う質問を携え、近々調査に入ろうと相談しています。庄内地域の自治体、例えば、酒田市、鶴岡市は母子自立支援員として有期雇用で1名ずつ採用し、児童扶養手当てを受給している人に対して、就労支援を行っているので、母子自立支援員の方に地域の実情や役割などについて話を聞いたり、支援センターに行ったりして調査するということを考えています。本来は「自立=就労」ではありませんが、小泉内閣以降、政府や厚労省はそうした施策をとっていて、ひとり親はより厳しい状況に置かれるようになっています。ただ、実際の母子自立支援員の活動は国の施策そのままではなく、相談を受けたり、支援を行っているNPOを紹介したりするということになっているとは思います。これからまだまだ詳しく調べていかなければなりません。
いま、日本は国、県、市町村レベルの自治体、そして県がもっている支援センターや相談所の役割分担がどうあるべきなのかが大きな課題になっています。結局は予算で動いていく側面があるため、予算措置がとられれば人が配置され、県や市町村の役割分担が不明瞭になるという問題が生まれてしまうこともあります。その辺りも院生の方の修士論文の研究課題になるかもしれません。
最近、照井孫久先生、澤邉みさ子先生、小関久恵先生と共同で「一人暮らし高齢者の見守り活動の調査研究」を行っています。これについても実は同様の問題をはらんでおり、見守りのモデル事業や委員会が多数あり、厚労省内でもタテ割となっていて、介護保険、高齢者支援、地域福祉の予算がバラバラに現場におりてきています。見守り問題は現場が直面している喫緊の課題なので、メニューがあって、予算があって、検討を行う委員会などがたくさんあるのはいいのですが、それをまとめるためにも、担い手の調査を行い、行政の事業との整合性をつけて、総合的に地域課題の分析の機会をつくろうということで3名の先生方と一緒に取り組んでいます。
――先生の研究室を志望する方へメッセージをお願いします。
一緒に取り組むというスタンスしかとれないかもしれませんが、福祉課題について公的部門、民間部門の役割、協働に関心のある方と研究調査、学びができればと思っています。